14 系胤譜考 けいいんふこう

藩撰系図 伊藤嘉兵衛祐清、円子記精親編

 【藩士の由緒・所務】

盛岡市中央公民館所蔵 南部家旧蔵文書 六五冊   (盛中29・1一69)

【史料の概要】 

寛保元年藩命により伊藤嘉兵衛祐清、円子記精親が纏めた刀差以上諸士の書上系図。当時存在していた黒印証文は概ね記載されていると伝えられている。又同族間で夫々が伝承する系図を寄せて、互いに確認し合い提出したことが諸家の記録に見える。一から三十九巻はイロハ順で盛岡在住諸士、四十巻は定府、四十一巻は 与力刀差、四十二・三巻は御徒、四十四から六十五巻は地方給人に大別して収録されている。

【史料批判・雑感】

系胤譜考』は各家に書上させた藩撰系図あり、『参考諸家系図』の親本と知られが、残念ながら「雑書」等藩の基本記録に照らして合致しない欠点が確認される。本書を利用する場合には、「雑書」のほか『身帯并御加増分地被召出類』『永御暇被下類』『身帯被召上』『永御暇被下類・身帯被召上』等の人事留(南部家旧蔵文書)外、『南部氏諸士由緒』『奥南落穂集』等との照合は厭わず行った方がよい。
この時、別に古文書集『宝翰類聚』乾坤二冊、『
普胤鑑考家』(『由緒御書物』外題)一冊が編纂されている。『参考諸家系図』は『系胤譜考』を基本とし、その他系図を参照して編纂されたと伝えているが、両書間では諸処に相違点が指摘できる。一例を示せば、『系胤譜考』宮系図は大別して宮小左衛門を祖とし、一族には綱道(与兵衛)・綱通・正綱・綱方等、「綱」を通字をとする系統と、宮十郎左衛門友重を祖とし、友次や友安、友隆等、「友」を通字とする系統があることを伝えている。前述の通り、当時は同族間で系図を摺り合わせて上程した経過があり、両系統間には同族意識はなかったと勘考される。然るに『参考諸家系図』は、先祖として検断十郎左衛門友行があり、友行には長男宮十郎左衛門友貞と二男宮彦六郎綱長の兄弟があったとしている。前述の十郎左衛門友重は友貞の子。綱道(与兵衛)は彦六郎綱長の孫とし、二系 統を一系統に仕上げている。その論拠は不明ながら、このような事例が随所に有ることを付記しておきたい。

【刊本】

なし
【著者】






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