一、九戸左近将監政実叛逆之事

天正十九年、豊臣秀吉の天下統一に最後の争戦で滅亡した一族


 南部三郎光行公五男九戸五郎行連九戸郡久慈城を賜り代々是に住す。十二代の孫修理大夫信実入道円心、二戸郡宮野城に移住し、其男右京亮信仲永禄八年に卒。其子修理家督一万石。左近将監政実と改む。母は八戸但馬守信長女。室は四戸甚三郎義時の女也。晴信公に仕へ一門の一座の席故に威勢双ぶの人なし。晴継公逝去。嗣子無之一門の内より相続の評議区々、政実を以て御家督と思ふもの多かるに、北尾張信愛出頭して田子九郎殿を以て永禄八年八月御家督定め二十六代南部大膳大夫信直公と称し奉る。此君の父は石川左衛門尉高信君。母は一方井刑部女。室は晴信公の姫君也。政実宗家を嗣事ならざるを快しとせず、嫉妬を起し、徒党を催し、天正元年に其事顕然たり。依之信直公出馬接戦。政実敗北。降和を願ひ暫く穏か也。十五六年又々徒党の輩相起り、諸所に一揆を企つ。北は津軽右京、西は秋田実季等内應なす。三戸城諸口へ兵を出し、其隙を窺ひ、九戸党諸所乱暴の所業あり。七戸彦三郎家国・久慈備前直治・一戸彦次郎実冨・櫛引河内清長・大湯四郎左衛門昌次・大里修理親基・圓子右馬允光種等、各々近辺に仇なし、十七年より宮野城籠り、日々合戦止む時なし。十八年信直公小田原参陣、秀吉公に謁し、其砌前田利家・浅野長政に就き領内逆徒征伐の援兵を願ひけるに、秀吉公御許し有之、帰国せしに追日に浅野弾正少弼長政下向。九戸城に攻囲ける故、三戸勢死力を尽し接戦。城内防戦及び難し降参を願ひしかば、長政平均を急ぐ故、これを宥免あり。信直公と能々内評の上に帰京せり。然るに九戸党又々集会して十九年に龍城せり。此旨殿下に訴しかば、秀吉公憤怒なし給ひて、奥州逆徒征伐として豊臣ノ秀次卿御下向。栗原郡三迫を本陣とし、魁将には淺野弾正少弼長政・堀尾帯刀先生吉晴・蒲生飛弾守氏郷、神君より井伊兵部少輔直政、其外殿下命に依て、隣国より秋田城介実季・小野寺遠江守義道・本堂伊勢守親道・仁賀保兵庫頭勝利・小国大膳亮之影・津軽右京亮為信出張して、一味の枝城姉帯を初、一々攻亡シ、九戸ノ宮野城のみ裸城となりね大軍厳敷攻囲故、城内死亡の多り出来、中々防戦の策も無之、政実初降参を願ひけるに頭取七人の外は御宥免退散勝手次第。七人は秀次卿へ伺ひ上赦免は其時にあるべしと、政実初七人御本陣三迫に引付となるに、秀次卿度々逆意を企、御宥免無之、栗原郡三迫石越村大島町に於て九戸政実は誅戮し、其外七戸家国・久慈直治・櫛引清長・大湯昌次・大里親基一戸実富・圓子光種、同く死罪に行はる。此処を後の土人岩ケ崎九戸壇と唱ふ。政実碑名虎山全嘯、其名碑名も此処にあり、政実一子落城の時幼少。四戸入道全閑懐にして没落。江刺郡に走り、正法寺に隠し、成長して豪邁智略。江戸住居し、堀野三右衛門政信と称し、秀忠将軍に奉仕。三千石を賜はる云云。

 政実の一族には
九戸彦九郎実親   政実弟室は晴信公女。初彦七政任。兄政実一味籠城。降参の砌屡々
          諫む。独り城中に残り血戦。武勇討死。
九戸隠岐連尹    信実二男左衛門信尹男なり。落城浪人。中野修理来客となり、口論の
          上修理を殺し、其場にて其男正康に殺さる
九戸杢兵衛尹実   連尹弟 落城浪人。諸所一揆党頭 大崎に加り蒲生勢と合戦して死
中野修理康実    政実弟 志和の婿となり高田弥五郎し称し、後岩手郡に住し改名。九
          戸党に入らず仕信直公三千五百石
姉帯与次郎兼政   一族刑部兼直男 姉帯城千五百石 若年両叔父後見 九戸一味。両叔
          父諫を用へず宮野城に篭り、天正十八年討死
姉帯大学兼興    兼政叔父。九戸逆意不同心、甥兼政を諫むと雖も用へす篭城。兼興不
          本意、自ら城に篭り武勇討死
姉帯五郎兼信    兼興弟 兄と同く討死
小軽米左衛門久俊入道一熈斉 政実を屡々諫め用られず、仕信直公三十石  
江刺家斎藤太久正
小軽米左衛門直連  久俊子
江刺家八郎

政実一味党并臣下
七戸彦三郎家国   七戸城七百石 頭人三迫被誅
七戸大輔慶高    彦三郎弟浪人
七戸宮内慶次    大輔子仕利直公
七戸伊勢守慶道   天正十九年討死
七戸左衛門慶通   伊勢子浪人
七戸縫殿助直次   伊勢二男浪人
七戸三郎太郎正国  彦三郎 諸所一揆起す
七戸将監
七戸与十郎
久慈備前守直治   久慈城 頭人三迫被誅
久慈中務少輔政則  備前子討死
久慈主水正政祐   備前二男討死
久慈出羽守治光   備前弟 落城津軽へ走り帰参
久慈九郎治吉    出羽子 実政実弟返忠仕信直公
久慈孫六治興
久慈修理入道浄衣
久慈修理重房    浄衣子
久慈野助親政    仕信直公
坂本雅楽助仲満   九戸一揆
坂本新立
坂本式部
一戸彦次郎実冨   頭人三迫被誅
一戸図書助光方   彦次郎弟討死
一戸信濃守政包   兵部弟 兄甥殺害出奔 改平舘氏
櫛引河内守清長   櫛引城頭人三迫被誅
櫛引出雲守興繁   河内子虜被誅
櫛引左馬助清政   河内子討死
櫛引将監光清    河内弟浪人
櫛引弥五郎興堅   出雲守子浪人
櫛引十兵衛清寛   河内二男秋田に走
大湯四郎左衛門昌次 五兵衛昌忠弟頚人三迫被誅
大湯次郎左衛門昌吉 四郎左衛門子津軽に走
大湯彦右衛門昌致  四郎左衛門二男津軽に走
大里修理親基    鹿角住頭人三迫被誅
大里備前親易    修理子 出羽に走
大里左衛門五郎親房 備前子浪人
圓子右馬允光種   九戸住頭人三迫被誅
圓子金十郎邦種   右馬允子浪人
圓子右馬助種貞   金十郎子浪人
高橋播磨守     姉帯討死
月舘左京亮
月舘右京
岩館彦兵衛     姉帯討死
南舘玄蕃
南館甚吉
毘沙門別当西法院  姉帯討死
天魔舘源左衛門
天魔舘覚右衛門
根曾利弥五右衛門  根曽利討死
古舘小十郎
新舘兵部允
大浦主殿助勝建
大澤帯刀
大森左馬助
大野彦太郎
大野彦六郎
大野弥五郎
中野造酒允正行
中野弾正
中野軍曹
中村七左衛門
中村嘉藤治
中里清左衛門
小鳥谷摂津守
小神弥七郎
小泉又四郎
小田民部允
小林弥左衛門
小間杉小左衛門
小笠原与一郎
上斗米民部
上斗米七郎
上野右衛門佐
上野十郎左衛門
上野民部助
横濱左衛門佐慶則   横濱住 七戸方降参仕信直公
野田覚蔵親正     落城浪人 赦免仕信直公
野田権左衛門
野辺地久膳三慶    横濱分 天正十八年二月卒
野田靱負親清     落城浪人 赦免仕信直公
野田庄左衛門
四戸伊豫入道全閑   政実子亀千代懐にして没落江刺へ走
野田久兵衛      姉帯討死
野田市之助
四戸中務宗光     金田一弟讒によりて秋田へ走る
平館下総正寿     一戸信濃子
平館兵庫政敏     一戸信濃二男
江繋喜左衛門正興   閉伊人城久三郎改 信直公
平館久左衛門嘉豊   一戸信濃三男
蛇口弥助光種
種市中務丞光徳    反忠仕信直公六百石
種市孫左衛門光広   中務弟浪人
種市与五右衛門光顕  中務弟 天正十九年討死
嶋森安芸守
嶋森内膳正       
工藤権大夫業綱
工藤右馬助業祐
工藤新十郎
工藤右衛門佐直祐
工藤万助幸祐     鉄砲達人
佐藤外記
山根彦右衛門
長内傅右衛門
吉田兵部允
山根彦内
長内弥左衛門
吉田掃部
山内伊八郎
長内庄兵衛
吉田新兵衛
山崎佐十郎
伊保内美濃守
吉田門助
宮山右衛門尉
和井内山三郎
太田与五右衛門
晴山治部允
岩崎弥五郎
福田掃部助
晴山玄蕃
花坂右近
福田権兵衛
泉山右衛門尉師泰
花崎弥三郎
附田甚兵衛
泉山兵部丞
花崎弥十郎
和田覚右衛門
泉山左衛門佐
花松左近
戸田監物
西法寺右衛門
安倍又三郎
津田五郎左衛門
西法寺辰之助
諏訪新右衛門
盛田安芸守
高善寺孫助
袰綿孫平次
知田覚左衛門
奥寺右馬允
鳥谷庄左衛門
田子民部允
二戸一休斎
鳥谷孫助
田子金十郎
二子喜左衛門
新谷孫左衛門
夏井久膳
三上越前守
新舘兵部
夏井弥八郎
三上才太郎
野瀬又右衛門
名久井久膳
三日市越中守
堀野刑部丞
名久井甚兵衛
三国傳助
堀野彦兵衛
名久井虎之助
八木平八
堀野弥三郎
名久井兵右衛門
高家将監
西野甚助
相嶋筑後守
美渡部玄蕃貞継
宮野弥三郎
相嶋左近
樫平伊豫守
新里平馬允
沖平九郎
軽米宇右衛門
樋口与五左衛    一戸篭城討死
東川小左衛門
有戸喜左衛門
白鳥但馬守
穴澤善右衛門
戸伊良監物
戸来喜右衛門


                  奥南落穂集改題


一覧にもどる